FXのズロチユーロサヤ取りと呼ばれている手法は実はサヤ取りではなかった!
本記事は、FXで最近話題?のズロチユーロサヤ取りについての考察記事です。
数あるFX手法の中でも、「スワップサヤ取り」は比較的安心・安全な手法と認識されています。今回は、ちまたで評判?のズロチユーロサヤ取りについて、そもそもスワップサヤ取りなのか調べてみました。
結論から言うと、ズロチユーロサヤ取りは、「FXのスワップサヤ取り」では無い、どちらかというと、株のサヤドリに通じるものがある、というのがココの結論です。
いわゆるFXのスワップサヤ取りよりもリスクが高い投資手法と考えます。以下、調べたことをつらつらと書き綴りました。
記事を全部読むのは面倒くさいという人のための、まとめはこちら↓
実はスワップサヤ取りではない
実体はEUR/PLNのショート取引
実際に儲けている人は沢山いる
EUR/PLNがなるべく高い位置で新規に建てること
為替差損益に振れ幅が生じる
シンプルにEUR/PLNをショートするのも手
ポーランドの地政学的リスクを納得して手を出すこと
ココのFXのメインはリピート系FXのマネースクエアのトラリピですが、トラリピは為替の変動によるキャピタルゲインが狙いです。しかし為替レートが上がったり下がったりするのは、当然ながら自分の思い通りにはなりません。
トラリピは、為替がレンジ内で上下に動いている時は利益を出すことができますが、トレンドが発生したり値動きが小さい時は、利益を出すことができません。
そこで、トラリピに加え、安定したインカムゲインが狙えるFXのサヤ取りも合わせて運用することで、トータルで安定した利益を上げることを目指した資産運用をしていきたいと考えています。
そして、2019/2末にトルコリラ/日本円の通貨ペアでのサヤ取りが良さそうだと判断し、まずは少額でテスト運用を始めました。
しかしながら、開始後からスワップサヤが段々と小さくなっていき、スワップサヤ取りの旨味が無くなってきた2019/8に決済しました
そもそもFXのサヤ取りって何? 株のサヤ取りとどう違うの?って方はこちらの記事をどうぞ!
管理人ココのTRYJPYのサヤ取り設定とその根拠を知りたい方は、こちらの記事をどうぞ!
ズロチユーロサヤ取りとは?
簡単に言うと、ズロチ/円の通貨ペアを買い、同時に、ユーロ/円の通貨ペアを売る両建取引です。twitterでもよく散見する手法です。1年ぐらい前からブームになってきていますね。皆さん利益を出されているようです。
うらやましぃ!
ブログ更新しました(^^)
? Nao (@zerokara_Nao) August 10, 2019
安心といっても、
投資である以上リスクが無いわけではないのでご了承下さい??
詳しくは別記事に書いてます?
ちなみ私も再稼働始めました!
下落相場でも安心して始められる投資方法 | 知識0から始める資産運用#サヤ取り#ズロチユーロ https://t.co/d3irFyh5WW
8月1日から始めたズロチユーロのスワップさやとり。
? おすし@楽をしたい (@osushiyo_osushi) September 3, 2019
100万円を1ヶ月投資して6,917円でした。これが12ヶ月続くと年間約8万円のプラス。スワップ投資はずっと続くと思ってないけどほったらかしで年利8パーセントはでかい。 pic.twitter.com/hjemlcmRqI
先週から始めた『ズロチユーロのスワップさや取り』について書いてみました。うまく運用できればメインの運用商品になるかも!
? もった@住宅ローンを元手に資産運用中 (@motta_1977) November 24, 2018
【年利約10%】ローリスク・ハイリターン!?ポーランドズロチとユーロのスワップさや取り投資法 https://t.co/jJObq1Czod
9月8日週 ポーランドズロチのスワップ成績
? JuhnDoe@CorrelationLab (@juhndoe4464) September 14, 2019
スワップ合計は少し減りましたが、収益率で年20%はキープしてます。ECB緩和、ポーランド現状維持なので、来週以降スワップ増加に期待です。ズロチ高で含み損が大幅に減少しました。
#FX #スワップ #ズロチ #デンマーククローネ https://t.co/iWMjpQeWHz
さて、ココがやっていたTRY/JPYの異業社スワップサヤ取りは旨味がなくなってしまい撤退したので、次なる候補として、Twitter界隈で皆さんが利益を上げておられるズロチユーロサヤ取りに興味を持ちました。
ココは、投資する場合は自分で徹底的に調べて納得しないと気がすまないタチなので、今回も自分なりにズロチユーロを調べてみました。
ズロチ(PLN)という通貨はあまり聞き慣れない通貨単位ですが、ポーランドの通貨です。一方で、ユーロ(EUR)はよく耳にすると思いますが、こちらは欧州連合に加盟している国が使っている通貨です。ポーランドは欧州連合に加盟していますが、イギリスのポンド(GBP)のように、独自通貨を採用しています。
そして、2019/9/15時点のそれぞれの日本円に対するレートは以下の通りです。
1PLN=27.716JPY(Ask)
1EUR=119.715JPY(Bid)
すなわち、EUR/PLN≒119.715/27.716≒4.319 です。ということは、ズロチとユーロの通貨価値換算比は約4.3:1(4.3ズロチ分が1ユーロの価値とほぼ同等)ということです。
そして、このズロチ円とユーロ円の通貨ペアの値動きはとても似ています。
以下の図は、上図が2019年初来のズロチ/円の日足チャートで、下図がユーロ/円の日足チャートです。確かに値動きは似ています。
そして、現時点では、ポーランドの政策金利は日本の政策金利よりも高いので、ズロチ/円で買いポジションを持った場合は、プラスのスワップポイントが付きます。逆に、EUも日本も政策金利はほぼゼロです。すなわち、ユーロ/円は売りポジションを持っていても、スワップポイントはほぼゼロです。
なお、念のため補足しておきますと、FXのスワップポイントは、各国の政策金利を元に各FX業者が独自に決めるものです。よって同じ通貨ペアでもFX業者によってスワップポイントは異なりますし、同じ業者であっても日々変動することもあります。
話を戻します。ズロチ/円の通貨ペアを単独で買いポジションを持つことでプラスのスワップポイントが付きますが、為替レートの変動によって、円に対するズロチの価値が下がってしまう、すなわち、ズロチ/円のレートが下がってしまうと、スワップポイント分の利益なんて吹っ飛んでしまい、損失がでてしまいます。
そこで為替の変動による損失を回避するために両建て取引を行います。
すなわち、ズロチ/円と値動きのよく似たユーロ円の売りポジションを同時に持つことで、為替変動リスクをヘッジするのが、ズロチ/ユーロスワップサヤ取り手法のミソの部分です。
例えば、買いポジションのズロチ/円のレートが下がって損失が生じてしまったとしても、同時に建てた売りポジションのユーロ/円のレートもズロチ/円に追従して同様に下がった場合は、ユーロ/円は売りポジションなので利益が生じます。すなわち、為替レートの下落が為替変動差益に及ぼす影響をほぼプラマイゼロにできます。
反対に、買いポジションのズロチ/円のレートが上がると利益が生じますが、同時に建てた売りポジションのユーロ/円のレートもズロチ/円に追従して上がったら、売りポジションなので損失が生じてしまいます。すなわち、為替レートの上昇が為替差益に及ぼす影響をほぼプラマイゼロにできます。
結果として、為替が上がろうが下がろうが、その変動差益損を相殺するというのが狙いです。
この時、上述のように、ズロチとユーロの価値が4.3倍ほど異なるので、ズロチ/円とユーロ/円の取引量を4.3:1にしておく必要があります。例えば、43,000通貨分のズロチ円の買いポジションを持った場合は、同時に10,000通貨分のユーロ/円の売りポジションを持つということです。
このように、ズロチ/円およびユーロ/円の為替変動リスクをヘッジしながら、ズロチ/円の買いポジション及びユーロ/円の売りポジションで発生するスワップポイントを日々積み重ねて利益を伸ばしていくという手法が、ズロチ/ユーロのスワップサヤ取りと言われている手法です。
ズロチユーロサヤ取りの実体は、実は…
為替変動リスクをヘッジしつつ、スワップポイントが毎日得られるズロチユーロスワップサヤ取りサイコー!って初めは思いました。でも、色々調べてみたところ、実はそんなに甘くなかったです。
スワップサヤ取りという手法は、ココがトルコリラ円でやっていましたが、確かにトルコリラ/円の為替変動の影響を受けず、日々スワップポイントが手に入っていました。トルコリラのようなやんちゃな通貨であっても、レバレッジを低く抑えておけばリスクの非常に小さな投資手法です。
ココのトルコリラスワップ、さや取り設定です。
ココのトルコリラスワップ、さや取り実績
しかし、ズロチユーロスワップサヤ取りは、同一通貨ペアでやるトルコリラ円のようなスワップサヤ取りとは違います。
まず、ズロチ/円の買いポジションを持つという意味はどういうことでしょう。これは手持ちの円を売ってズロチを手に入れるということです。同じく、ユーロ/円の売りポジションを持つということは、手持ちには無いユーロを空売りすることで円を手に入れる、ということです。
別の言い方で説明してみるとすると、ズロチ/円の買いと、ユーロ/円の売りを同時に建てるということは、手持ちにはないユーロを空売りすることで円を手に入れ、手に入れた円を使ってズロチを買うということです。あいだに円を挟んでいますが、要するにユーロを売ってズロチを買うってことです。すなわち、単にユーロ/ズロチを売る(ショート)取引をしているだけです。
ということで、ズロチユーロサヤ取りの実体は、実は単なるEUR/PLNの通貨ペアをショート取引しているのと実質的に同じことだったのです。
では次に、ズロチユーロサヤ取りのリスクについて考えてみます。
ズロチユーロサヤ取りのリスク
ズロチユーロサヤ取りの実体は、単にユーロ/ズロチのショート取引だということを述べました。これの意味するところは、ユーロズロチ(EUR/PLN)のレートが上がれば損失が生じ、レートが下がれは利益が生じるということです。
そうなんです。通常のFXのスワップサヤ取りって為替変動リスクをヘッジできるのが最大のメリットなのですが、ユーロ/ズロチの為替レートの影響を受けてしまうのです。
でも、ズロチ/円とユーロ/円って値動きが似ているので、ユーロ/ズロチって一定じゃないの?と思った方、以下の図はEUR/PLNの2019年初来の日足チャートです。低いところで4.23、高いところで4.39と、変動しています。下図は、EUR/PLNの年初来の日足チャートです。
4.23~4.39だったらほとんど4.3だし、なーんだ、やっぱり問題ないんじゃん?って思ったそこのあなた!!(調べ始めた頃の私) こちらを御覧ください。実はボラリティが低いのはここ数年の話で、過去には 結構変動してます。下の図は、2002年以降のEUR/PLNの月足チャートです。2004/2と2009/4には4.9まで高騰していますし、2008/7には3.2まで下落しています。
通常、FXのスワップサヤ取りの場合、レートに関わらずいつでも稼働開始および終了できます。一方で、このズロチユーロサヤドリの場合、EUR/PLNのレートが低い時に入ってしまうと、EUR/PLNレートが上がった場合に、日々得られるスワップ益なんてふっとんでしまうぐらい損失がでます。
では、次にどのぐらい為替変動の影響を受けるかシミュレーションしてみた結果です。
ズロチユーロサヤ取りのシミュレーション
実際にEUR/PLNレートが動くと損益はどうなるのかシミュレーションしてみました。後ほど詳細を示しますが、ズロチユーロサヤ取りはEUR/JPYとPLN/JPYの両通貨ペアの為替レートの影響を受けるため、利益や損失を算出するのは少し手間がかかりました。
今回は、2019/9/15時点の為替レートを前提に期待利益などのシミュレーションを行ってみました。元となるスワップポイントの基本データは、FXプライムbyGMOの2019年9月のスワップポイント実績値を使いました。PLN/JPNとEUR/PLNのスワップポイントはそれぞれ、8円、-3円(いずれも1万通貨当たり)です。1年ほど前に比べると、旨味は減っているようですが、それでもまだまだプラスです。
今回、FXプライムbyGMOの基本データを使ったのは、ズロチ/円、ユーロ/円の両方の通貨ペアを扱っており、1つの業者でズロチ/円、ユーロ/円の取引を完結できるというメリットがあるからです。両建て取引をする際に売りと買いで業者を分けると資金管理が大変なので、1業社で両建て取引を完結できることは大きなメリットです。
また、FXプライムbyGMOはズロチ/円、ユーロ/円を含む20通貨ペアもの通貨ペアを扱っています。
そして、トレードの約定率の高さとスリッページ(発注レートと、実際に注文が約定する時のレートの差)が小さいことに定評があるFX業者です。FXをする上ではいくらスプレッドが狭いことを謳っていても、注文は約定してナンボなので、約定率が高いのは大事です。
そして面白いのは、FXプライムbyGMOは、なぜかズロチ/円を推してます。専用ページまであります。↓
FXプライムbyGMOのページ ズロチ/円 <特別コンテンツ>
このページでも、"ユーロ/円との相関性が高い"と示されており、まるでズロチユーロのサヤ取りをやってくれって言わんばかりです(笑)。
話を戻します。上の表のスワップポイントを元に期待利益率を見積もってみます。
スワップポイント
ズロチ/円(買) +8円/日(1万通貨)
ユーロ/円(売) -3円/日(1万通貨)
為替レートは今回もこのレートを使用します。
最小単位である1Lot分(ズロチ/円を4.3万通貨分買い、ユーロ/円を1万通貨分売る)を取引すると、ズロチを約119万円分買い、ユーロを119万円分売ることになり、合計約238万円の取引となります。
1Lot当たりに得られるスワップポイントは31.4円となります。もし仮にこのスワップポイントが365日続いたとしたら、スワップポイントだけで11,461円の利益になります(為替変動とスプレッドは未考慮です)。
次に、スワップポイントだけを考慮した場合の期待利回りを計算してみました。FXはレバレッジを掛けられることが特徴です。下の表の1番上の行は、レバレッジを全く掛けない(倍率1倍)の時であり、その時の投資資金は2,388,938円です。これに対する年間期待スワップは11,461円でしたので、期待利回りは0.48%となります。レバレッジ1倍でも銀行に預けるよりは十分割がいいです。ただし、繰り返しになりますが、為替変動が全く無かった場合の計算値であり、スプレッド損(売買手数料)も考慮しておりません。また、一日当たりのスワップポイントが31.4円をずーっと維持できたという前提です。
同様に、2行目は、仮に50万円を投資資金として口座に入れた場合は、レバレッジが4.78倍となり、その時の期待年利は2.29%です。一番下の行のように、10万円しか口座に入金しなければ、レバレッジは23.89倍となり、ほぼ最大リスクを取った状態となります。この時の期待年利は11.461%です。
このように、為替変動が無かった場合、レバレッジに応じて、スワップだけで約0.5%~11%の利回りが期待できます。シツコイですがあくまで為替変動がなかった場合です。
ここまでは、為替変動を考慮しない場合のシミュレーションでしたが、ここからは、ズロチ/円とユーロ/円のレートが変動した場合の損益をシミュレーションしてみます。
取引開始時のレートは、上の計算でも使った為替レートをここでも用いることにします。
1PLN=27.716JPY
1EUR=119.715JPY
すなわち、EUR/PLN≒119.715/27.716≒4.3195 です。このレートで取引を開始したとします。そして、年始以来の、EUR/PLNは低いところで4.23、高いところで4.39でしたので、この範囲でEUR/PLNが変動した場合の、為替変動差益損がどうなるかシミュレーションしてみました。以下のシミュレーションではスワップポイントは考慮していません。またスプレッド損(手数料)も考慮しておりません。
ところで、4.23≦EUR/PLN≦4.39で変動するとは言っても、実際の取引通貨ペアはPLN/JPYとEUR/JPYの2通貨ペアです。
そこで、最初のシミュレーションとして、EUR/PLNが、取引開始時と同じ、EUR/PLN=4.3195という関係を維持したまま、PLN/JPYとEUR/JPYのレートが変動した場合をシミュレーションしてみました。
なお、過去10年のズロチ/円とユーロ/円の安値と高値は以下の通りでした。
ズロチ/円 安値21.58円(2012/6)、高値35.98円(2014/12)
ユーロ/円 安値94.08円(2012/7)、高値149.79円(2014/12)
ですので、ズロチ/円が約20円~34円、ユーロ/円が約90円~150円の間で変動し、かつEUR/PLNが4.3195の関係を維持した場合を想定したシミュレーションとしました。
シミュレーション結果を表にまとめたものが以下です。
この表に示すように、EUR/PLNが新規取引開始時の4.31935から全く同じで変動しなかった場合においても、PLN/JPYとEUR/JPYの為替レートによって、評価損益は-1,356円~1,331円と±約1,300円の開きが生じます。
すなわち、EUR/PLNが新規取引開始時からまったく同じレートであったとしても、円に対してズロチ高、ユーロ高になるほど利益は増え、逆に、円に対してズロチ安・ユーロ安になると損失が出る方向に動きます。
これが意味するところは、ズロチユーロサヤ取りをやる場合は、EUR/PLNのレートだけを見ていると、利益(もしくは損失)を見誤る可能性がある、ということです。
では次に、EUR/PLNのレートが、新規取引から変化した場合のシミュレーション結果を示します。
こちらは、先程と同条件のEUR/PLNが4.31935で新規取引開始し、EUR/PLNが4.23の時に決済した場合です。
EUR/PLNのレートが4.23で決済した場合、円に対してズロチ高、ユーロ高になるほど利益は増え、逆に、円に対してズロチ安・ユーロ安になるほど利益は少なくなっていることとが分かります。理由はさきほどと同じです。
ここから分かることは2つあります。1つは目は先程と同じです。決済時のEUR/PLNレートが4.23と同じであっても、利益には幅が生じうる、すなわち、その時のズロチ/円がおよびユーロ/円のレートによって利益が変わるということです。
2つ目は、決済時のEUR/PLNレートが、取引開始時の4.31935から4.23へと、EUR/PLNが下がることにより、評価損益が20,000円~30,000円になるということです。利益が増えているので嬉しい話ですが、これはスワップポイントの利益は考慮していません。すなわち、この場合幸運にも?EUR/PLNのレートが新規取引時よりも下がったおかげて利益が出たということです。そしてその額はスワップポイント1年分の11,461円(31.4円×365日)よりも大きいということです。
では、今度は逆に、新規取引時よりもEUR/PLNのレートが上がって、EUR/PLNが4.39の時に決済した場合のシミュレーション結果を示します。
結果はだいたい想像できると思いますが、以下の表のような結果になります。
はい、評価損益は見事に真っ赤ですね。そして、EUR/PLNが4.39と同じレートであったとしても、円に対してズロチ高、ユーロ高になるほど損失は小さく、逆に、円に対してズロチ安・ユーロ安になると損失が大きくなっています。
そしてその損益は約-1.3万円~2.5万円となり、1年分のスワップポイントを加味したとしてもトータルでマイナスになる程です。
通常のFXのスワップサヤ取りの損益は、原則為替レートの影響は受けません。ですので、どのタイミングで開始することができ、どのタイミング終了することもできます。稼働日数に応じたスワップポイントが累積するだけです。
しかし、このズロチユーロサヤ取りは良くも悪くも、損益は為替レートの影響を受けるということです。これは、上述したように、ズロチユーロサヤ取りは、単にEUR/PLNのショート(売り)取引だからです。EUR/PLNが下がれば儲かるし、上がれば損する、それだけのことだったのです。
なお、仮に投資資金が20万円で、取引開始時のEUR/PLNが4.31935であったとすると、EUR/PLNが4.7付近を超えてくる付近で、証拠金維持率が80%を切ることになり、強制ロスカットの可能性が出てきます。(FXプライムbyGMOのロスカットラインは証拠金維持率80%、ロスカットラインはFX業者によって異なる)
なぜ、4.7付近とあいまいな言い回しをしたかというと、証拠金維持率は、EUR/PLNのレートだけでなく、EUR/JPYとPLN/JPYの為替レートにも左右されるからです。次のグラフを見て下さい。
このグラフは、横軸がEUR/PLNのレート、縦軸が20万円を投入した場合の証拠金維持率です。これまでと同様に、スワップポイントとスプレッド損は考慮しておらず、為替変動のみ考慮しています。そして、EUR/PLNのレートが、3~5の範囲で変化する場合の、EUR/JPYとPLN/JPYの為替レートをn=500の標本にてランダムに決定した場合のグラフです。
ランダムといっても、いいかげんな数字ではなく、過去10年で実際にEUR/JPYとPLN/JPYが起こり得たレートの範囲内でランダム数値を発生させました。
緑の縦線は、これまでのシミュレーションで前提としてきた、取引開始時のEUR/PLNレート4.31935を示しています。
このグラフでは、投入資金20万円だと、EUR/PLNレート4.31935であっても、EUR/JPYとPLN/JPYの為替レートによって、証拠金維持率は約150%~270%という振れ幅が生じうることが分かります。
そして、EUR/PLNレートが4.5を超えてくると、EUR/JPYとPLN/JPYの為替レートによっては証拠金維持率が100%を割ってきて危険水域になることを示しています。
そして次のグラフは、その時の為替差益損を示したグラフです。シミュレーション条件は先程と同じです。
ちょうど緑のライン、すなわち新規取引開始時と決済取引時のEUR/PLNレートが同じ場合に、為替差益損はゼロになっています。ただ、完全にゼロではなく、このグラフのY軸方向に分布を持っています。
そして、EUR/PLNのレートが上がれば損失が増え、レートが下がれば利益が増えていくのですが、興味深いのは、新規取引開始時からのEUR/PLNレートから乖離するほどに、為替差益損の振れ幅が大きくなっていることです。
なお、このグラフでは強制ロスカットが考慮されていませんので、EUR/PLNが5付近の時は損失が-20万に達していますが、実際はそこまで行くまでに強制ロスカットされます。
さて、上述のシミュレーションは、
3≦EUR/PLN≦5
94≦EUR/JPN≦150
と、かなり広いレンジのシミュレーションでしたが、次は、
4.2≦EUR/PLN≦4.5
110≦EUR/JPN≦120
の条件でシミュレーションしてみた結果を示します。これぐらいの条件だと直近の変動幅に近いので、かなり現実的だと思います。
まず、証拠金維持率のシミュレーション結果を示します。
当然ながら先程のシミュレーションと同様に、同じEUR/PLN比でも、グラフに示すように、証拠金維持率にはふれ幅が生じます。そしてこのふれ幅は、EUR/JPYとPLN/JPYのレートの違いによって生じるものです。
そして、次に示すグラフがスワップを考慮しない、為替差益損のシミュレーション結果です。こちらも先程のシミュレーションと同様に、EUR/PLNのレートが下がれば利益が伸びるのですが、EUR/PLNレートがグラフに表示する程度のレンジであれば、利益はEUR/PLNのレートでほぼ決まり、EUR/JPYとPLN/JPYのレートの影響度はそれほど大きくないようです。
興味深いのは、取引開始よりもEUR/PLNのレートが上がれば損失がでますが、その時の損失の振れ幅は、レートが上がるほど大きくなるので、レートが大きく上がってきた時は、注意が必要です。
ズロチユーロサヤ取りはダメなのか
結論から言うと、ズロチユーロサヤ取りは、全然ダメではありません。ココが言いたかったのは、”スワップサヤ取り”という言葉から連想されるような、低リスクな投資手法ではない、ということです。
むしろ、実際に多くの方がしっかり利益を出している実績があるので、とても有益な手法であると思います。仕組みをちゃんと理解して適切に運用すれば、利益の出せる手法だと思います。
では、ココはするのか、といわれたら
うーん、難しいなー
もしするとしたら、EUR/PLNが少なくとも4.4、できれば4.5以上になった時が、稼働開始のタイミングの目安だと思っています。
以下は、EUR/PLNが4.4および4.5で開始した場合の為替差損益シミュレーションです。直近はスワップポイントが小さいので、スワップにはあまり期待しない方がいいかと思います。あくまでオマケ的なものと認識しています。為替差損益を狙った単純なショートの取引です。
まず、EUR/PLNが4.4の時に取引開始した場合のシミュレーション結果。
続いて、EUR/PLNが4.5の時に取引開始した場合のシミュレーション結果。
EUR/PLNはボックスレンジ相場なので、このようにボックス上限付近のEUR/PLNが4.4や4.5で売りから入るのが良いと思います。
ただ、ここまで書いておきながら言うのもなんですが、わざわざEUR/JPYとPLN/JPYの2通貨ペアで合成EUR/PLNのショート取引をやらなくても、シンプルにEUR/PLNを扱っている業者でショート取引をやればいいかな、と思いました。
例えば、サクソバンク証券はEUR/PLNを取り扱っています。サクソバンク証券って聞き慣れないかもしれませんが、 ソフトバンクのバッタモン会社ではなく、第一種金融商品取引業にちゃんと登録されている国内のFX会社です。親会社はデンマークのSaxo Bankです。
サクソバンク証券は、取り扱いの通貨ペアが158もあります。EUR/PLNを含む、マニアックな通貨ペアで取引できることが特徴です。トルコリラ/円などの一部の通貨ペアを除き1,000通貨単位で取引できるのも良いです。
個人的な希望としては、ココのメインFX業者の一つである、マネースクエアのトラリピでEUR/PLNを狭スプレッドでサービス開始してくれたら超歓喜なんですけど・・・。
ここまでは比較的テクニカルな分析を中心に話を展開してきましたが、敢えて付け加えるとすると、EUR/PLNの投資をする場合は、ファンダメンタルズ的にもリスクを考慮しておいた方がいいかもしれません。
すなわち、過去の実績上はズロチとユーロの相関は確かに強かったのですが、これは、結果的にそうであっただけで、相関が強くなるという明確な根拠は無いように思います。
ポーランド経済は欧州圏内が主な取引先のため、ズロチがユーロの影響を大きく受けるというのは理解しやすいです。例えば、EU圏で有事が生じてユーロが下落した場合、ズロチも連動して下落するだろうという考えは納得しやすいかと思います。この意味では、ズロチはユーロに連動し易いと言ってもいいかと思います。
しかし逆に、ポーランド国内で何か有事が生じてズロチが下落した場合、果たしてユーロに影響を強く及ぼすでしょうか?
ユーロの通貨規模に対してズロチの通貨規模は小さいです。これはあくまでココの私見ですが、ユーロに全く影響を及ぼさないとは言えないですが、そこまで強く影響を及ぼすこともないと思います。
言い換えると、ズロチはユーロに連動しやすいが、ユーロは必ずしもズロチに連動しやすいということはない。よって、これまでの相関係数は確かに高かったけれども、今後も高い相関係数を維持するという合理的な根拠の説明は難しいと思っています。
また、もう一つの読めないリスクは、ズロチが廃止されてユーロに通貨統合されることです。
ポーランドは欧州連合の加盟国での1つですが、現時点でポーランドは通貨にユーロを利用していません。しかし、ユーロに通貨統合される可能性はゼロではないかと思います。そのような発表がされた場合に、何が起こるのかリスクを見積もることはかなり難しいかと思っています。
まとめると、
実はスワップサヤ取りではない
実体はEUR/PLNのショート取引
実際に儲けている人は沢山いる
EUR/PLNがなるべく高い位置で新規に建てること
為替差損益に振れ幅が生じる
シンプルにEUR/PLNをショートするのも手
ポーランドの地政学的リスクを納得して手を出すこと
以上、ズロチユーロスワップサヤ取りと呼ばれる手法について調べてみました。
長文をお読み頂きありがとうございました